この町だからできた、仕事と子育ての両立。
ふるさとで“幸せと輝き”をサポート
ふるさとで
美しくなることは、心を潤わせる大切な営み。本松彩実さんは、髪とまつ毛に関わる美容の仕事に10年以上携わり、2020年からふるさとである日南町で、ヘアケアとまつ毛エクステ(人工まつ毛)の専門サロン「Feluce(フェルーチェ)」を経営している。
まつ毛ケアを中心に幅広いメニューが重宝され、今では地元住民だけでなく、町内でも30分以上かけて通う方や、米子市や新見市(岡山県)から訪れるお客もいるそうだ。
「ここは日南町じゃないみたい、と言っていただくこともあります。日常を忘れてときめく時間、ホッとできて美しくなれる場所があることって、すごく大切ですよ。
米子市の美容専門学校を卒業後、美容師として7年ほど働いた後、当時流行していたまつ毛ケアの道に入った。鳥取市へ移り、まつ毛エクステ専門店で働いていた頃にパートナーと出会い結婚。ご主人の転勤で一度は鳥取を離れ和歌山で専業主婦をしていたものの、「やっぱり仕事がしたい」と米子市へ帰ってきた。
「自宅でサロンを開業するなら、よく知っている米子がいい。そう主人に相談したらOKしてくれたので、頑張ってみようと決めました。実は当時、占いにハマってて…家庭運が良いから家で仕事しなさいって言われていたので迷いもありませんでした(笑)。
自宅アパートでまつ毛エクステのお店をやっていましたが、1年ほどで妊娠。子育てと仕事を両立させるには、家族の助けがある実家の方がいいなと思って日南町に帰ることにしました。主人の勤務先は安来(島根県)だから遠くなるんですけど、それでもいいよって言ってくれて。いつも応援してくれる主人には感謝しています」
ご主人は福岡県出身のIターンだが、都市部ではなく田舎育ちだったため、日南町を初めて訪れた時から心地よさを感じていたそう。そして実際に住んでみて、やっぱりとても気に入った。本人曰く、「住民の皆さんが交流イベントや飲み会に積極的に誘ってくれて、地域になじみやすかった。あっという間に居場所ができて仲間が増えて、今では釣り友達がたくさんいるし、野球チームに2つも入ってます(笑)」とのこと。よそ者を受け入れる温かい土地柄は、移住者にとってありがたい。
働きながら子育てをする難しさを解決するために選んだ、実家でのサロン開業。しかしオープン当初は、「そもそも住民さんにはまつ毛エクステを知らない人も多いだろうし…本当にここでやっていけるのかな…」と不安だった。
でも予想は良い意味で裏切られ、現在はお客様も増えて評判も上々だ。客層は50〜60代が多いが、さらに幅広い年代の人に来てもらって多くの人の役に立てるようにと、ヘアやまつ毛にこだわらず施術のバリエーションを増やしていこうと考えている。
「こうやって仕事に打ち込めるのは、保育園から帰ってきた子どもの面倒をおばあちゃんが見てくれているのが大きいですね。近所に子どもは少ないですが、弟家族が斜め向かいに住んでいて、甥っ子とは保育園も同じ。毎日一緒に、おばあちゃんに子守してもらって遊んでいます。家族だけでなく近所の皆さんの優しさにもすごく助けられていて、私が子どもの頃に見てもらっていたのと同じように、地域の子どもを大事にしてくれるから安心できる。生まれ故郷の良さを感じます」
子育てがしやすいよう、行政サポートが充実しているのは日南町の魅力の一つだ。保育料を無償化しているほか、在宅育児を行う世帯への補助金もある。また同町には、町内で起業したり事業承継に取り組もうとする人をサポートするチャレンジ企業支援という制度があり、本松さんの場合は、実家の一部をサロンに改修するための大きな後押しになった。「この制度のおかげで開業を決断できました。子育て支援が手厚いこともすごく助かるし…、実家が日南町で良かった」
自分も地域の一員だという気持ちが芽生え、仕事のモチベーションにも繫がっている。
「近所の美容室をやっている80代の先輩たちがいつか引退されたときに、地域の皆さんは行くお店がなくなってしまって、わざわざ米子まで出かけなきゃいけなくなったら大変です。だから私がここでサロンをやることで、皆さんの助けになりたいという気持ちが今では強くなりました。年上のお客様が多いので、子育ての相談に乗ってもらったりして、私も助けられているんですよ。お客様に元気や勇気をもらっています。ありがたい環境だなとしみじみ思います」
日南らしい、温かい思いやりの循環が生まれている、“幸せと輝き” (=フェルーチェ)という名のサロン。
ふるさとの人を輝かせたいと語る彼女自身が、キラキラと輝きを放っている。
本松 彩実さん
Saimi Motomatsu
髪とまつ毛のトータルサロン「hair & eye Feluce」の経営者であり施術者。日南町上石見出身。米子で美容師として働いた後、鳥取市でまつ毛エクステ専門店に転職。鳥取市でパートナーと出会い結婚、ご主人の転勤により和歌山で半年暮らした後に夫婦で米子市へ移住。自宅でまつ毛サロンを経営していたが、出産を機にふるさと日南町へUターン。一人目のお子さんが1歳になる頃に現在の店をオープンした。令和4年現在、3歳と1歳の二人のお子さんのママ。